【EB】六畳一間

ルーファスのSSです。
↓はスズカさん視点。同シチュ視点別で見事に描いていただきました。感謝。是非合わせてどうぞ。
http://mugefann.blog.shinobi.jp/Entry/1755/
【注意:アンオフィシャル設定あり。苦手な方は回れ右を推奨】

 扉を開けると、そこは六畳一間だった。
 ……いや、よく見ると六畳もない。備え付けの小さな収納でスペースが削れている。
 玄関から部屋内までの短い廊下は、入って四歩も歩けば終了で、右側は小さな流し台、左側は申し訳程度のお手洗いとなっている。風呂なんかもちろん、ない。
 …………。狭い! 狭すぎる!

 ことの始まりは数日前。
 ラッドシティへの移動を前にして、いつものごとく住宅の手配を頼んでいた俺に、親父はこう言い放った。
「すまん。移動までにちょうどいい家の確保ができんなかった。もう一ヶ月くらいありゃあ、なんとかなるんだが……それまで集合住宅で我慢してくれんかね?」

 …………。騙された……。
 顔に手を当て、うなだれる俺。
 あんのクソ親父っ、こんな六畳にも満たない部屋なんて一言も言ってなかったじゃねぇか! どんだけ俺に貸しがあると思ってんだよ、いけしゃあしゃあと「まあ、任せとけ」みたいな顔しやがって。
 溜息を漏らす俺の後ろから、ひょっこりと鈴が顔を出した。小動物みたいな仕草で、肩越しに部屋の中を覗きこむ。
 そうなんだよ。俺一人だったらまあ、我慢できないこともないんだが……鈴がいるからなぁ。この狭さは辛かろう。
「わぁ。素敵なお部屋ですね、ルーファス!」
 ……はい?
 思わずまじまじと顔を見つめ返す俺の気持ちを知ってか知らずか(多分、知らない)、鈴はにこにこと後を続けた。
「二人っきりで、一つのお部屋……なんて。夢みたい……です」
 そう言って、自分の言葉に照れたように、俺の腕にしがみついて赤くなった顔を隠す鈴。正直、可愛い。
「あー……そう、だな」
 今までもずっと二人きりだったが、結構それなりに広めの一軒家に住んでいたから、確かに二人で一部屋だけ、っていうのは初めてか。
 部屋の中へ入って、ぐるりと見回してみる。やっぱり……狭い。
 試しに、備え付けの布団を並べて敷いてみると、それだけで物を置くスペースがほとんどなくなるほど。
 うーん、厳しいな……と、腕を組んで悩む俺を尻目に、てきぱきと荷解きを始める鈴。二人で抱えてくることができる荷物の量なんてなんてたかがしれているので、あっという間に片付いていく。
 調理器具を流しの棚に押し込みながら、鈴がぽつりと呟いた。
「私、ね……閉じ込められていたんです。狭い部屋で、いつも一人きり……。人に会うのは、お世話の女中さんと、たまに来てくれるお姉ちゃんだけ……」
 鈴の方を振り返る。流しが死角になって、表情が見えない。
「……小さな和室一部屋が、私の世界の全てだったんです。……その後、お姉ちゃんに連れられて、広い世界を知ることになったけれど、でも……」
 鈴がこちらを振り向く。心なしか、瞳が潤んでいるような気がする。
「……今は、あなたがいるから。同じ一部屋でも、それだけで……全然違う。すごく……幸せ、です」
 そう言って、俯いて顔を隠してしまう鈴。目だけが、上目使いで真っ直ぐ俺を見つめてくる。何かをねだるみたいに。
 ……やれやれ、しょうがないな。
 俺は荷解きを中断し、包むように鈴を抱きしめる。
 一瞬、鈴の身体がこわばるものの、すぐに弛緩したように俺へと体重を預けてくる。ちょうど都合良く敷いてあった布団の上へと倒れ込み、鈴の上に乗っかって、真っ赤に染まる頬に手を当てながら帯を──
「ども。ルーファス、頼まれてた荷物持ってき───わ!?」
 がちゃ、と扉を大きく開け放って姿を見せたのは、大きな段ボール箱を胸に抱えたラルウァと、その肩口に乗った猫(の姿をした悪魔)のカロルだった。
 ちなみに。先ほど説明したとおり、玄関から部屋内までは短く真っ直ぐな廊下で繋がっているので、玄関から部屋内の様子がまるで丸見えである。
『どうやら邪魔したようだ。再見。』
 ばたん、と扉が閉まり、シンとした静寂が部屋を支配する。……人ん家に入るときは、呼び鈴を鳴らすか一声掛けてから。これ、絶対な。
 真下を覗き込むと、鈴が青くなったり赤くなったりで、ぷるぷる震えていた。どうやら相当なショックを受けたらしい。帯をはだける前だったのが不幸中の幸い。
 早いとこ、廊下と部屋の区切りに目隠しを付けよう。そう思いつつ、鈴の顔に自分の顔をかぶせる。
「まあ……扉を開ければ世界に繋がってる、ってことだよな」
 だから、今この部屋にいるのは、二人が選択した結果なんだと。そういうことなんだよ、きっと。

<END>

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